研究概要 |
Irishには、補文標識(COMP)が3種類存在する(go ‘that,' aL(direct relative marker), and aN(indirect relative marker))。また、移動が関与すれば、痕跡(trace)が残り、そうでなければ、残余代名詞(resumptive pronoun)が現れる。今回の調査では、mar ‘as'構文と比較構文補文標識交替を、COMPが2つある例文で検証し、どの組み合わせが可能であるか調査した。(Irishには、3つの主要な方言があるが、今回の調査では、問題を明確にするために、dataは、Ulster方言からのものに限定した。)COMPが3種類あり、それが生じうる箇所が2箇所あり、また、chainの最後尾が、traceかresumptive pronounかの2種類あるので、論理的組み合わせは、(COMP1, COMP2, trace(t)/resumptive pronoun(rp))のchainにおいて、3x3x2=18通りある。 1 まず、chainの最初の要素(COMP1)が、goである例文は、全て非文であるので、18通りの中、6通りは、不可能で、残りは、12通りとなる。 2 その中、(COMP2, t/rp)の関係が、(aL, rp)、(aN, t)、(go, t)の場合は、全て非文となるので、2x1x1=2が3セットとなり、6通りが非文となる。したがって、残りは、6通りとなる。 3 その中、mar ‘as'構文においては、(aL, aL, t)と(aL, aN, it)の2つのchainだけが、また、比較構文においては、(aL, aL, t)と(aN, aL, t)の2つのchainだけが許容されることが分かった。*有*McCloskey(2002)によれば、cad e ‘what'などのargument wh-phraseを含む疑問文は、5つのchainが許容される。それらは、(aL, aL, t),(aL, aN, it),(aN, go, it),(aN, aN, it),(aN, aL, t)である。このことから、mar ‘as'構文と比較構文の移動の性質は、項疑問文のそれとは、異なるということが分かってきた。さらに、mar ‘as'構文の調査によって、アイルランド語の節の構造は、CPの上に、ここで仮にMar Phraseと呼ぶ構造が存在し、CPの構造は、これまで考えられてきたより、複雑になっていることが分かってきた。
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