研究概要 |
本研究は、旧ユーゴスラヴィアのスロヴェニアを除く独立国(クロアチア、ボスニア、セルビア、モンテネグロ)における現在のメディア状況と、そこに見られる言説の言語分析を通して、拡大EU加盟への道のりを模索する当該地域の人々のアイデンティティーを明らかにすることにある。この目的のために、平成18年度はまず、メディア・ディスコースの分析方法の検討を進め、それと平行して旧ユーゴ地域の新聞雑誌、またテレビ、インターネット上の報道などを収集しながら,当該地域の言説にどのような特徴が見られるかについて考察した。2006年には、ミロシェヴィッチ旧ユーゴスラヴィア(セルビア)大統領の急死、モンテネグロの独立、さらにはコソヴォの独立問題をめぐる議論など、重要な出来事があったため、これらの問題に関するセルビア、ボスニア、クロアチア、モンテネグロ各地における反応に注目した。具体的には、こうした出来事に関する記述を、旧ユーゴ各地の主要メディアから収集し、どのようなテーマの記事にどういった語彙が用いられているかを調査した。また、平成18年9月には、クロアチアならびにセルビアに赴き、現地の言語状況、メディア状況についての調査を行った。この一連の調査は、目下データをとりまとめて論文執筆に取りかかっている段階である。さらに、本課題研究を、言語とアイデンティティーというテーマでより発展的にとらえるために、上記の調査・研究と平行して、言葉の「自由連想」という角度からのアイデンティティーの模索という可能性についても検討した。この考察に関連して、平成18年度北海道大学スラブ研究センター冬期国際シンポジウムにおいて口頭発表を行った。
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