研究課題
今年度はロシア科学アカデミー東洋文献研究所所蔵ウイグル語文献中の『阿弥陀経』の研究に多くの時間を割いた。この文献にはウイグル語でAbitake(阿弥陀経)の名称が付けられているが、翻訳原典に相当する漢文は見つかっていない。内容は浄土仏教に関わる高僧の伝記を主体としており、部分的には「大正大蔵経」に収録された「高僧伝」中のものに対応する。このウイグル語仏典Abitakeはマインツとイスタンブルにも同類のものが保管されているので、それらも併せて研究した。研究はベルリン・ブランデンブルグ科学アカデミーのPeter Zieme教授と協力し合った。転写テキストと英訳さらに注と解説をつけて現在出版段階に入っている。『阿弥陀経』以外の研究としてはウイグル文アビダルマ論書の研究を行った。大英図書館所蔵の『阿毘達磨倶舎論実議疏』を中心に、ロシア科学アカデミー東洋学研究所所蔵の『入阿毘達磨論』、ストックホルム民族学博物館所蔵の『阿毘達磨舎論』、ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミー所蔵の『阿毘達磨倶舎論頌の注釈書』の断片類などをまとめて総合的に研究した。この研究は単行本として2007年3月に出版された。さらに、ロシア科学アカデミー東洋文献研究所の所蔵する未解明ウイグル語仏典断片20数葉の転写テキストを作成し、その約半数には粗訳を施した。これらは断片の内容解明の前段階として準備された。研究発表としては2007年9月にフライブルク大学(Albert-Ludwigs-Universitaet Freiburg)で開催されたドイツ東洋学会議30周年記念シンポジウムに招待され、ウイグル文アビダルマ論書について発表した。
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Aspects of research into Central Asian Buddhism(ed. P. Zieme), Turnhout
ページ: 349-368