研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、ハンガリー語において「動詞接頭辞」と呼ばれている文法カテゴリーに属する要素の意味と機能を明確にすることにある。この動詞接頭辞は意味的にも統語的にも非常に複雑な働きをすることから、記述がきわめて困難で、定義もあいまいで、学習の観点からも習得がきわめて難しい要素のひとつである。動詞接頭辞はハンガリー語では「動詞に結びつくもの」という意味で、動詞(基動詞)の前に接続して(正書法上は続けて書かれるが、以下では便宜上ハイフンで分けて記す)、その動詞の意味を変化させたり、新たな意味を付加したり、まったく新しい意味を形成したり、動詞のアスペクトを変化させたりする要素である。本研究の具体的な目的は以下のとおりである。1.ハンガリー語において空間移動表現がどのような言語要素によって表現されているのかを明らかにする。2.動詞接頭辞付き動詞と基動詞の意味用法の違いを比較することによって、動詞接頭辞の意味機能を明らかにする。3.基本的な意味である空間的用法(基本的スキーマ)が抽象的用法に意味拡張されるときに、どのようなメトニミーやメタファーが機能しているかを明らかにする。動詞接頭辞の最も基本的な機能は移動の方向を表すことであることから、初年度である本年度は、ハンガリー語において空間移動表現がどのような言語手段によってなされているのかを明確にすることを目的とした。文学テキストの一部やコーパスを使った分析の結果、ハンガリー語の空間移動表現には、動詞接頭辞以外に、動詞、場所格接尾辞、後置詞、副詞が使用されていることが確認できた。また、同じように完了アスペクトを表す動詞接頭辞megとelについて意味分析を行い、微妙なニュアンスの違いは、文法化によって背景化された経路が関与しているのではないかという内容の研究発表をハンガリーのデブレツェンで開催された国際ハンガリー学会で行った。
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VI. Nemzetkozi Hungarolbgiai Kongresszus Debrecen, 2006. aug. 23-26 (国際ハンガリー学会〔ハンガリー、デブレツェン〕にて発表)