研究課題
本研究の目的は、ハンガリー語において「動詞接頭辞」と呼ばれている文法カテゴリーに属する要素の意味と機能を明確にすることにある。この動詞接頭辞は意味的にも統語的にも非常に複雑な働きをすることから、記述がきわめて困難で、定義もあいまいで、学習の観点からも習得がきわめて難しい要素のひとつである。動詞接頭辞はハンガリー語では「動詞に結びつくもの」という意味で、動詞(基動詞)の前に接続して、その動詞の意味を変化させたり、新たな意味を付加したり、まったく新しい意味を形成したり、動詞のアスペクトを変化させたりする要素とされている。本研究の具体的な目的は以下のとおりである。1.ハンガリー語において空間移動表現がどのような言語要素によって表現されているのかを明らかにする。2.動詞接頭辞付き動詞と基動詞の意味用法の違いを比較することによって、動詞接頭辞の意味機能を明らかにする。3.基本的な意味である空間的用法(基本的スキーマ)が抽象的用法に意味拡張されるときに、どのようなメトニミーやメタファーが機能しているかを明らかにする。本年度は、ハンガリー語の空間移動表現において重要な役割を果たしている動詞接頭辞の意味と機能について、動詞接頭辞付き動詞と接頭辞が付いていない基動詞を比較して分析した。その結果、動詞接頭辞には主として以下の機能があることが改めて確認された。1.動作の方向を表す。2.完了アスペクトを表す。3.動詞の意味を変化させる。4.動詞の統語構造を変化させる。また、同じように完了アスペクトを表す動詞接頭辞megとelについて意味分析を行い、微妙なニュアンスの違いは、文法化によって背景化された経路が関与しているという主張を論文にまとめた。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Nyelv, Nemzet, Identitas II
ページ: 295-300