本研究の目的は、連続発話における文間・文中ポーズ挿入に伴う発話の調節の詳細を明らかにすることである。すでに、研究代表者による一連の先行研究から、単独発話における文中ポーズの実態が明らかにされてきているが、本研究では、これらの知見をもとに、分析対象をさらに連続発話へと広げ、文中ポーズに加えて文間ポーズについて解析を行う。そして、より大きな発話単位の産生において、発話とポーズが、また文間ポーズと文中ポーズが、互いにどのように影響を及ぼし合うかを明らかにすることにより、ポーズを含む連続発話の産生の背後にある規則性の解明を目指す。 初年度は、単文を分析対象として、文中ポーズと文末ポーズが調音に及ぼす影響を比較したが、今年度は、複数の文からなる連続発話(パラグラフ)を対象として、文中ポーズの挿入が、パラグラフを構成する文や文間ポーズの産生にどのような影響を及ぼすかについて分析した。その結果、パラグラフを構成する文に文中ポーズを挿入して発話した場合、そうでない場合と比べて、文間ポーズが伸張するという傾向がみられた。文中ポーズと文間ポーズは、本来それぞれ独立にコントロールされうるものであるが、今回の結果から、文中ポーズの挿入という局所的な発話の調節が、文間ポーズ長の変化という、より大きな範囲にかかる発話の調節を引き起こすことが示された。
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