研究概要 |
本年度は,未発表のソグド語文書を解読する作業を断続して行ってきている.ひとつの資料群はベルリンにあるトルファン学研究所が,ドイツの国立図書館から委託され保管しているトルファン出土の仏教文献である.20世紀初頭の探検隊の将来にかかる文書で,現在はホームページ上で写真が公開されており,その中から未解読のソグド語仏典を全点選び出し,初歩的な解読を行った.原典を比定できたものに数点ついては論文にまとめた.二つ目は大谷探検隊が20世紀初頭に将来した文書で,現在は中国の旅順博物館が保管している資料である.2006年11月に一部の文書の写真版が発表され,そこに4点のソグド語文書が含まれていることを確認した.すべて漢文仏典の裏に書かれており,マニ教関係の文書である.それらについてもやはり初歩的な解読をし,その成果を口頭で発表した.三つ目は中国で新たに出土した世俗文書で,小さな断片ではあるが唐の年号が記されていることと,漢文の朱印が押捺されている点で極めて貴重な資料である.解読の結果は既に口頭で発表してあるが,論文は,ソグド語文書といっしょに出土した漢文文書についての中国人の研究とともに,中国で発表されることになっている.四つ目はロシアのサンクトペテルブルグにある東方学研究所が保管する資料で,帝政ロシア時代に入手された資料の写真が最近になって公刊された.それらの中からソグド語であることが知られないままになっていた断片を50点ほどを発見・抽出し,現在解読中である.以上が平成18年度の研究実績の概要である.
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