研究概要 |
平成19年度は,ソグド語の未解読資料のうちベルリンにあるマニ教文書の解読を進めた.300点ほどの資料の内半数ほどについて初歩的な解読を終えることができた.新資料の探索としては,平成18年12月に再発見された大谷探検隊将来の資料の一部であるおよそ200点ほどの断片を調査し,40点ほどのソグド語文書を抽出した.そしてそれらについて,初歩的な解読を終えた.他の文書とともにカタログを作成し,この資料を管理する龍谷大学のスタッフと共同で発表する運びとなった.中国にある資料の調査も行った.一つは新疆ウイグル自治区の博物館が保管する資料の調査である.ウルムチ市にある新疆ウイグル自治区博物館では,1950年代にトクズサライで行われた発掘によって発見されたものの未公開まま放置されていたの資料を調査し,言語の特定を行うとともにテキストの転写を行った.トルファン市の博物館では,ベゼクリク千仏洞で発見された漢文碑文の行間に刻まれたソグド語銘文を発見した.テキストを作成し翻訳を行った.中国では,旅順博物館に相当数のソグド語文書があることが分かっていた.大谷探検隊将来の資料が,戦前にこの博物館に入っていたことに由来する.昨年10月初旬に2日間ではあったが調査が許された.その結果未整理の断片が相当数あることが判明した.しかし時間の関係で転写して研究することはできなかった.今年度以降の課題である.このような資料の調査と並行して,研究の成果を発表する作業も行った.ベルリンのドイツ国立図書館に保管された未発表の仏典についての研究や,新疆ウイグル自治区トルファン市で2004年に発見された手紙文書の解読と内容の検討を単行の論文として発表した.またそれらの成果を一般向けの講演会で発表し,社会貢献の一環とした.講演の内容は近く一般向けの本として公刊される予定である.
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