本年度は次の2つの実験を行なった。(1)予備的実験用音声の検討および作成、(2)前後を子音に挟まれた母音/u/の予備的知覚実験および予備的脳機能計測。 (1)については藤本が中心となり、前後の子音環境を考慮した母音/u/の有無を発音しわけることを要求される検査語(日本語30語、英語31語)を選定し、東京方言話者による発話実験を実施した。現在藤本がデータの解析を行なっているところである。この結果を踏まえ本実験用の検査語を決定する予定である。 (2)については、船津が担当した。予備的知覚実験の結果、前後を有声子音に挟まれている場合、母音/u/の有無に関し聴取者は何らかの違いを検出していることがわかった。ただし母音/u/が存在しているかどうかを正確に指摘するには、かなりの音声学的訓練を受けた聴取者でなければ難しいことが示唆された。同様に前後を無声子音に挟まれている場合においても、母音/u/の有無に関し聴取者は何らかの違いを検出するのは比較的容易であるが、違いを正確に指摘できるには相当な知識が必要であることが示唆された。予備的脳機能計測として前後を無声子音に挟まれている母音/u/の有無により生じるミスマッチ反応を計測した。オドボール課題を用い、脳磁図によりミスマッチ反応を計測したところ、母音の有無によりミスマッチ反応が生じることが明らかになった。さらに2人の被験者の結果から前後を有声子音に挟まれている母音/u/の有無によっても、ミスマッチ反応が生じる可能性が示唆された。 来年度は、以上の結果を踏まえ単語中の母音添加の機序について、生理学的、脳科学的に解明を行なう。
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