日本女性の言葉遣いの多様性を捉え直す試みとして、従来、研究対象となっていなかった女性ボクシングトレーナーの言語使用を分析した。特に「男性語」とされてきた動詞命令形について、1)どのような談話文脈で選択されるのか、2)そのコンテキストにおける、これらの言語形式を含む発話の機能は何か、を分析した。 これまでの分析の結果は、英語、日本語双方の論文にまとめ、現在、改稿段階に入っている。また、当該科学研究費補助金を受けて開催したマルチモダリティー・ワークショップや、東京明治学院大学で行われたエスノメソドロジー・会話分析研究会の2006年春の研究例会において、分析データの報告を行った。 上記論文では、2006年初頭までに収集した468分のデータを研究対象とすることにしたため、2006年度は新たなフィールドノーツへの記録及びビデオデータの収集は行わなかった。468分のデータは、女性トレーナーが指導を行う同一の選手について異なった形態で練習を行っているものに焦点を当てて整理、編集した。468分のうち、分を研究協力者の助力を得て書き起こした。また微視的会話分析に必要な静止画像も数枚取り出し、論文に載せることができた。 研究の方法論的課題については、上記研究会及びワークショップにおいて分析方法や着眼点が明確になり、それを基に6、7例の会話断片について詳細なデータ分析を行った。分析を通じ、丁寧さだけで動詞命令形の意味機能を捉えることができない、という結果を得、現在それが日本女性の言語使用の多様性についてどのような意味を持っているのか考察を進めている。
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