研究課題
基盤研究(C)
本年度は、ニューメディアのドイツ語と日本語のテクストに関するデータ収集に先立った研究計画全体の土台づくりを主目的として研究を行った。言語記号と視覚的記号に関する従来の研究を鳥瞰するかたわら、最新の書誌媒体やネット上の資料を収集・分析しながら、ブログ、SNSなどが社会に浸透していくことを背景としたメディア言語学の最前線の問題性把握と整理に努めた。従来型メディアである新聞については、その記事内容、見出し、イラストやフォントの配置のデザインに着目し、一面広告の内容と縦書きと横書きとの関係を探究した結果、複数の日本語表記間のシフトによる意味創出のダイナミズムと柔軟性が浮き彫りにされ、日本語母語話者が共有している「マンガの文法」が埋め込まれた日本語のビジュアル・グラマーの一端を見出すことができた。一方、海外共同研究者との専門的討議の結果、ニューメディアにおけるドイツ語のテクスト構成においては、文字シフトが不在である分、タイポグラフィーやレイアウト、色使いや配色に日本語テクスト以上に意を払う必要性があるとの仮説を立てることができた。さらに、研究テーマが隣接している研究者による専門的知識提供と討議を経て、ビジュアル表現素のもつ指標性の役割やいわゆる「イメージ・リーディング」の機制を考察することが言語研究やわれわれの研究計画推進にとって必須であることが確認された。また、グラフィックデザインの分野における作品と書体との関係について大学生を対象として実施したパイロットアンケート調査の結果、絵の種類に対して適していると判断される書体が明確に存在することが予測され、ますます多様化するフォントや色などのビジュアルな要素がテクストと相互作用してどのように機能し意味創出を行っているのかを知るための方法論を考える手がかりを得、次年度以降に向けての見取り図を描くことができた。
すべて 2006 その他
すべて 雑誌論文 (6件)
<Variation im heutigen Deutsch : Perspektiven fur den Sprachunterricht>,ed.by Eva Neuland(Frankfurt/M.u.a. : Lang)
ページ: 413-416
渡辺学(編)、『ニューメディアに映じたドイツ語の最前線』(日本独文学会研究叢書)(日本独文学会発行) 46号
ページ: 15-28
<"getriwe an allez wenken">、ed.by Franz Hundsnurscher,Roland Harweg, Eijiro Iwasaki(Goppingen : Kummerle)
ページ: 196-210
<Schriftlichkeit und Bildlichkeit>, ed.by Ryozo Maeda, Wilhelm Vosskamp, Teruaki Takahashi(Paderborn : Fink) 印刷中
<Kongressakten. Asiatische Germanistentagung 2006 Seoul.Kulturwissenschaftliche Germanistik in Asien>, ed.by Koreanische Gesellschaft fur Germanistik(Seoul : Hankookmunhwasa) 印刷中
大原由美子(編)、『日本語ディスコースへの多様なアプローチ』(国立国語研究所研究会報告書)(凡人社) 印刷中