本年度は次の四点について硬究を行った。 第一に、イギリス植民地から中国という大きな社会変化を経た香港の大きな言語変化の-つとして、英語教育について分析した。それは、19年度に訪問したヘネシーロード官立小学校の資料を基に、「小学校の英語教育を考える-香港の事例からの再発見-」(東京理科大学紀要(教養編)第41号)にまとめている。ここでは日本の初等教育における英語教育導入の動きと対比させて、香港社会における英語教育の特色を明らかにしている。 第二に、11月に香港の繁華街の路上観察を行い「言語景観」としての街の看板・広告を写真撮影した。この資料は現在分析中である。 第三に1月に、基督教宣道会宣基中学を見学して、香港の中学における英語教育の現場をビデオで撮影した。英語教育について担当者にインタビューを行い、テキストや時間割を閲覧した。さらに、香港人の、広東語(母語、日常生活の言語)、英語(かつての統治者の言語であり、今なお公用語)、普通話(中国の共通語、書き言葉としての公用語)、そしてミックスコード(中国語と英語の混合語)それぞれに対する心理的態度を測るために質問紙調査を依頼した。その結果は現在分析中である。 第四に、この三年に及ぶ香港研究から、返還前と返還後10年を経た香港社会における言語状況の変化について「返還から10年後の香港」(『英文学会誌』27号)にまとめた。
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