研究代表者は昨年度末に引き続き、昨年度後半に収集した心態詞schonの短文の発話データの収集および音響分析作業を進め、持続時間、強さ、基本周波数を測定し、発話全体における韻律的特徴と、個々の音節における韻律的特徴の両方の観点から分析を行った。その際、schonに見られる4つの主な心的態度とされる1)確信2)限定つきの肯定3)反論4)時間について、それぞれ異なる特徴が見られるか調べた。特に、今回着目したのは発話全体のピッチ曲線の特徴である。発話の開始地点と終了地点における基本周波数を測定し、ピッチ曲線の全体的な傾斜の度合を調べた。その結果、特定のschonの心的態度(部分的肯定)については、ピッチ曲線の傾きが平板になるなど、心的態度によって異なる特徴が見られた。10名分のデータについて、新たに統計分析を行ったところ、個人差がかなり見られた。そこで各被験者における4つの心的態度それぞれの平均値を分析したところ、それぞれの被験者において、4つの心的態度における平均値には有意差が見られた。また、上記の調査と併行し、研究分担者は昨年までに収集した対話データを分析し、実際にschonがどのような心的態度で頻繁に用いられているか調べたところ、上記の4つの心的以外に、驚きや相対化といった新たな心的態度が用いられていることがわかってきた。但し、データの個数が少ないため、これについては来年度も引き続き詳細に分析を進める。なお、昨年度の研究成果について2008年2月14日〜16日に行われたローマにおけるドイツ言語学学会(Tagung deutsche Sprachwissenschaft in ltalien)にて口頭発表を行った。この内容について来年度初めに論文執筆を行う予定である。
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