研究の最終年度にあたる本年度は、収集した44件の面接調査談話について、分析用の文字化データ整備を完了した。そして、文字化および録音・録画データをもとに前年度までの分析・考察をさらに進め、結果を学会での口頭発表および学会誌への投稿の形で公表した。本年度終了時には、3年間の研究成果をまとめた成果報告書を作成した。 研究期間の前半(平成18年度、19年度)では、三者面接調査における回答者間相互作用について、その種類内容、面接調査談話の運営・構築における働き、時間的経過に伴う内容や度合いの変化、および、それらが回答者間の関係(友人同士か初対面か)によってどのように異なるかを分析した。本年度は、その結果をふまえつつさらに視点を広げて、調査者も含めた三者間の協働的な談話構築のありようを分析し、調査の質問・回答に見られる共感の表出、変則的な回答行動、調査回答に見られるストーリーテリング(およびその重ね合い)などの現象を考察した。その結果、調査者・回答者間の一定の役割と枠組みに基づく面接調査という談話においては、時にその枠組みに抵触するかに見える行動があらわれることがあっても、そうした行動は参加者間の相互作用を通じて適切に談話に位置づけられていること、そしてその位置づけは当該の枠組み自体を活用することによって実現されていることが明らかになった。本研究での分析結果によって、近年ますます盛んになりつつある多人数会話の研究、および参加者間の役割関係や行動枠組みを基盤とする制度的会話の研究に一定の寄与を行い得たと考る。
|