研究概要 |
本研究課題は,複数表現モダリティの統合的関係からなる「発話」構造を空間,時間,メディアの三つの相互比較要因について,発話における統語的操作および相互行為操作の共通点と相違点を体系的に観察することを目的としている.平成19年度の研究目標と課題は次の通りであった. ・研究目標:複数の表現モダリティの統合的関係を観察するため,(I)統語構造,(II)情報構造,(III)相互行為の3つの観点にとって,相互連関性の高いデータ収集手法及び分析枠組みを設定する. ・研究課題:(全体)音声言語・手話・ジェスチャーのデータ収集とその整理.(研究班)平成18年度に個別に考察した上記(I)〜(III)の観点を組み合わせた統合的な分析枠組みの検討:(I)+(II)統語構造と情報構造(原田なをみ・神田和幸・高梨克也・坊農真弓),(II)+(III)情報構造と相互行為(高梨克也・坊農真弓・堀内靖雄・細馬宏通). これらの目標と課題に沿って,データ収集手法と分析枠組みの検討を行った. まず,手話データについては,高梨と坊農,堀内が自然な手話会話データのビデオ収録と整理を行った.分析としては,神田が日本手話の形態論的分析,原田と坊農が日本語と日本手話の統語構造の比較,坊農と高梨が手話談話の情報構造の分析,堀内が手話会話に見られるうなずきの相互行為的特徴の分析を,それぞれ行った. また,ジェスチャーを伴う音声会話については,高梨,細馬がデータ収録と整理を行った.分析としては,高梨と坊農が音声発話の情報構造と視線や指差しジェスチャーとの間の相互関係の分析,細馬が音声発話に伴うジェスチャーやパラ言語的特徴のもつ相互行為上の機能の分析を,それぞれ行った. 以上により,平成19年度の目標と課題はほぼすべて実施された.
|