今年度中に行ったこと、明らかになったことは以下の通りである。 疑問節については現代語データから例文の抽出を行い、統語(形態)的性質として名詞的性質の強いものと副詞的性質の強いものとの少なくとも2つのタイプがあること、外部との関係については同格的性質の強いものと述部に対し補充成分的に働くものとの2つのタイプがあること、このそれぞれの2つのタイプがクロス分類的を埋める形で存在し、計(少なくとも)4つの種類があることが明らかになった。(中間的カテゴリーを認めるかどうかについては現時点では保留)。 条件文においては、反事実的条件文(反実仮想文)において従属節内のテイル系は、傾向としては反事実的であることを強めるが反事実的でない読みを完全に排除する働きをするわけではないのに対し、主節における過去事象を指さないタ形は反事実的であることをほぼ完全に保証することを明らかにした。また、反事実的条件文の定義に関し従来より厳密な定義を行い、反事実的条件文の中に、少なくとも文法的振る舞いの異なる典型的反事実的条件文・主節のみ反事実であるタイプ・修辞的反事実的条件文の3種があることを、具体的言語現象から明らかにした。 この他、コーパスデータの構築と一部分析を進め、動詞と構文交替、中世語従属節のテンス・アスペクト現象へのアプローチを試みた。特に中世語従属節のテンス・アスペクト現象については基本形の機能負担の変化と、節内ウ・ウズル形の出現のしやすさとが相関することを明らかにした。
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