各種日本語従属節の、個別的な内部構造上の性質と、主節中での位置を明らかにした上で、その相関に関する知見を得るのが本研究課題の主要な目的であるが、本年度(平成19年度)は主として以下のような実績・成果を挙げた。 ・コーパスデータについては、現代語については川野が、古典語データについては橋本が加工を含め、データの集積・精密化を行った。古典語データについては千年度から行っていた『天草版伊曽保物語』の入力・デバッグ・表記揺れの処理等をほぼ完成させ、分析可能な状態を実現した。また、中世語抄物資料のデータ化の検討・試行版作成に着手し、『中華若木詩抄』のテキスト校訂・試行的入力を行った(ただし抄物資料のデータ化についてのテキスト選定には一部問題も残されており、上記資料以外の抄物資料のデータ化を優先する可能性も残っており、外部のレビューも含め、打ち合わせを行っている)。 ・現代語従属節の意味論的分析については、疑問節・アト(ノチ)節・マエ節・ナガラ節について分析を行った。特に、従来起こらないというのが優勢な説であったアト節におけるテイル形の出現について、非能格動詞の持続読みでは比較的許容されやすいこと、動詞の純粋なアスペクチュアリティだけでなく、対応する非テイル形が許容されやすいとアスペクチュアリティと独立に許容度が上がることなどが、内省データ・コーパスデータ双方から明らかになった。
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