最終年度として、以下のような成果を得た。 1. 現代語の内省データによる研究としては、主節に非過去を担うタ形を持つ、反事実的条件表現の成立条件について得た知見 (より具体的には、先行研究で示される 「運命の分岐点」 の設定が、好ましくない状況であるほうが相対的に困難になるということ) をブラッシュアップ・改訂し公刊した。また、アト節におけるテイタ形の成立について、 「アテリックな述部であること」「並行する (対応する) 単純タ形が許容されにくいこと」 が必要条件となっていることを、前年までよりも多数のデータと、修正された理論的検討によってより精度の高い形で明らかにし、一部公刊した(さらに印刷中の部分もある)。 2. 古典語については、既存のコーパスに加え、前年度までにある程度作成したキリシタン版伊曽保物語・キリシタン版平家物語について、専門的精度の高い電子データを完成させた。また、中世語の条件節を中心とした従属節の中に、いわゆる南の四段階における類別に従う(すなわち、ある形がある要素を内部に含み込むことができる/ できない、ということが決まっているケースがある、ということが一定の確度で示された。 3. 周辺的成果として、従属節現象が主節より明確に現れる場合のあることを示し、文法教育・日本語作文教育に益する可能性のあることを示した。
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