1 和刻本『笑府』に江戸期に刊行された3種と明治期に刊行された1種の都合4種がある。このうちの江戸期の3種について、全国の図書館等を調査し、その各種について印刷状態を丁寧に比較調査した。(今回は明治期の1種は、江戸期版本とは性格が異なるところがあるので、調査からはずした。) その結果、次のような結果を得た。 ○半紙本『笑府』(明和5年刊)=明治初期にいたる42本について本文・刊記など約150箇所の異同を調査。その結果、同一版であるが22種類に分類された。すなわち最初の刊行以来明治初期までに同じ版木を使って22回印刷されたと推定される。 ○小本『笑府』(明和5年刊)=明治初期にいたる19本について約180箇所同様の調査をした。その結果、同一版であるが10種類に分類された。すなわち最初の刊行以来明治初期までに同じ版本を使って10回印刷されたと推定される。 ○『刪笑府』(明和6年序)=明治初期にいたる26本について本文・刊記など約100箇所の異同を調査。その結果、同一版であるが10種類に分類された。すなわち最初の刊行以来明治初期までに同じ版木を使って10回印刷されたと推定される。 いずれもが100年余の長期間にわたり流布した。ただし再刻本はないこと、残存部数がさほど多くはないことから、ある人々にはよく読まれたが、広く流布したものではないと推定される。なお、これら和刻本に所収の話で中国明末の原刊本に一致するものについての文字語句などの異同はごく限られている。 2 上記3種の江戸期刊行の和刻本『笑府』にある左振り仮名付漢字語約3400をすべて採集してリスト化した。これを冊子体にして刊行した。これらの白話語彙が日本語の語彙としてどの程度定着したかの研究は今後の課題である。
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