本年度は次の3計画に従事し、所期の成果を得た。 1)18年度に引き続き、近世本草書・往来物等と『物類称呼』記事との比較検討を行い、典拠関係の可能性がある記事を整理・一覧し、影響関係について考察を加えた。特に、『和漢三才図会』との比較に利用するために、同書の訓み下し文を作成し、それに基づいて作業を継続した。 これにより、『物類称呼』が先行書の方言記事に負うところが大きいとの前年度の成果を確認することが一層確実となり、方言記事の年代を確定する上で重要な知見を得た。 2)前年度に予定していながら実施できなかった近世辞書『男節用集如意宝珠大成』の複写を入手することができ、それによって既に指摘されている典拠記事のほか、典拠の可能性が考えられる新たな記事を見出すことができた。 3)典拠関係が明らかな記事のうち、複数の依拠記事が考えられるものについて考察を加え、『物類称呼』の編者がどのような編纂方針で臨んでいたかについて考察を加えた。暫定的な見通しでは、編者の方言記事への関心は必ずしも純学問的なものではなく、やはり俳諧師としての興味・関心に基づくところ大きいとの感触を得ている。 4)本年度中に研究成果の一部を公表する予定であったが、学会発表や論文等としてまとまる形の成果を得ていないので、来年度を期すこととした。なお、関連する論文・図書を各1部発表した。
|