研究概要 |
本年度は,本研究課題の初年度にあたることから,方法論の確認と全体像の把握,データベース構築のための基盤作りに努めた。具体的な研究成果は以下の通りである。 1.モダリテイの概念・研究法についての基礎的考察 語法研究的なアプローチから文論・機能主義的なアプローチへ。命題とモダリティを切り離す分析から両者の有機的相関性の解明へ。主観性モダリティ論から現実性モダリティ論へ。本研究課題の出発にあたって,まず,国内外の研究動向の検討を通じて,日本語モダリティ論の再構築は,こうした基本理念に基づいて進められていくべきだということを確認した。 2.実行系モダリティの全体像に関する記述的研究 そのような意識をもつモダリティ研究の実践として,一人称の未実現の動作を表す文のモダリティを,1)話し手の未来の動作に対する認識,2)話し手の未来の動作への志向,3)可能な動作と必要な動作,の3つの側面から記述し,特に一人称文に特有の2)について,まちのぞみ性を核とする文の体系のなかに,従来,願望や意志を表すと言われている文を位置づけ,文内容と現実および聞き手との関係に着目しながら,それらを欲求文,意欲文,決意文,覚悟文に分類し,相互関係を説明した。また,1)や3)のモダリティも,一人称と結びつくことで,望ましさや意志の表現に大きく傾くことを指摘した。その成果の一端は,日本語文法学会第7回大会招待発表の機会に公表し,他の文法研究者との間で質疑応答や意見交換を行った。 3.データベース構築の基盤作り 実行的な文の用例データベース構築に関して,本年度は,言語情報処理のための環境整備とコーパスの収集・整備を行い,試行的に,シナリオ類から一人称未来動作文の全文を抽出して属性指定型データベース作成した。2の研究は,このデータベースを利用して行った。
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