研究概要 |
研究期間の最終年度にあたる本年度は,前年度からの継続課題に取り組み,その成果を研究発表あるいは論文として公表するとともに,今後の展開を睨んだ新たな取り組みを行い,本研究課題を総括した。具体的な取り組みは以下の通り。 1モダリティの概念規定および研究方法の問題 (1)主観性モダリティ論の立場から日本語のモダリティ研究を牽引してきた益岡隆志氏の最新著作について,現実性モダリティ論の視点が見られることに注目し,モダリティ研究史におけるその意義と問題点について検討した。その結果を学会誌の書評論文としてまとめ,公表した。 (2)海外におけるモダリティ研究の実態調査として,日本語と言語構造の類似する韓国語におけるモダリティ研究の動向を日本語研究の場合と比較すべく,韓国外国語大学の鄭相哲教授を訪問し,専門的知識の提供を受け,100分にわたる対談を行った。対談内容はICレコーダーに録音してあり,これに基づく共著論文を準備中である。 2実行系モダリティに関する記述的研究 (1)前年度から継続している,対話における意志表明に関する研究をとりまとめ,国際学会で研究発表を行い,韓国の研究者たちと議論を行った。 (2)実行系モダリティのデータベースの整備・拡張を行った。 3文法化研究・機能的アプローチによるモダリティ論の新たな展開の可能性の模索 (1)動詞「限る」の中止形の後置詞化(とりたて形式化)について文法化・主体化の観点から考察し,その成果を語彙史の研究者の集まる研究会で発表し,意見交換を行った。語彙史関係の論集文として公刊予定。 (2)ダロウの意味と多機能性について,一般言語学のモダリティ論や機能主義言語学の方法論を参照しつつ,ムードとモーダルシステムの両面から分析した。出版社の企画する意味論講座の一部として公刊予定。
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