研究概要 |
本研究(3年)の2年目として以下の調査、分析を行った。 1 高山寺調査に従事し鎌倉時代の僧坊活動を記録した古文書の調査を実施した。 昨年度に引き続き、高山寺における僧坊として従来注目されることのなかった「覚薗院」の第一世、義淵上人霊典とその法流を継承する覚薗院の一統の事績を中心に調査を進め、聖教目録の作成と保管に関してこの一群が果たした役割について検討した。霊典が直接的に目録の作成と整理に関わっていたことが明らかになりつつあり19年度に論文の形で公表した。ただ、これが僧坊全体の活動として第二世に継承されているか(つまり学統として受け継がれているか)については、依然として未解明な部分が多く,さらなる調査と検討が必要である。 2 高山寺以外の公共図書館や天理図書館などの資料調査を実施し新たな資料と知見を得た。 特に、天理大学図書館に保管されている高山寺旧蔵本の原本調査を実施したことは新たな進展であった。高山寺の古目録で名称のみ知られている聖教が実際に天理大学に所蔵されており、従来不明であった目録と実物の一致を見ることができた。 3 すでに公刊されている「高山寺資料」や原本調査を実施し、それらをデータベース化した。中でも19年度に刊行された「高山寺経蔵典籍文書目録完結編」を分担執筆し、その中で現存する聖教の表紙に記載された古目録の箱番号との対応関係において相当の進展を見ることができた。この作業を継続していけば、高山寺草創期の聖教の保管と整理の実体解明に十分に役立つことが予想される。
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