研究概要 |
本研究では、漢語アクセントの通時的研究に資するために、「漢語アクセントデータベース」を作成することを目的としている。具体的には、マイクロソフト・アクセスを用いて、アクセント史資料研究会が長年にわたって作成してきた「アクセント史資料データベース」に含まれる漢語データを、各文献間、および字音来源データ(非和文文献に現れる漢音系字音・呉音系字音)と相互に参照可能にするものである。今年度は、データベースの設計を行ったうえで、字音来源データとして入力すべき文献資料の選定作業と入力作業を進めてきた。 本データベースは、マイクロソフト・アクセスのリレーションシップ機能、および自動的なマッチアップ機能によって漢字データを連携させ運用するために、大漢和辞典番号で一意な管理を行うこととした。したがって各漢字への大漢和辞典番号の割り当てと、異体字の包摂基準を確認することが最初の作業となった。文字コードの選定については、後述の電子広韻との連携を考え、JIS X0208-1983に準拠し、データ作成作業に着手した。 字音来源データに利用するものとして選定した呉音系字音資料のうち、本年度に入力し整備したのは、金光明最勝王経音義(承暦3年[1079]写,496データ)・観智院本類聚名義抄(鎌倉初期写本,963データ)・九条家本法華経音(鎌倉初期写本,1371データ)・法華経音訓(至徳3年版,1750データ)・法華経単字(保延2年[1136]写本,1814データ)であり、尊経閣文庫本色葉字類抄(院政期書写本)は入力作業中である。漢音系字音資料としては、便宜的に切韻系韻書の広韻を用いることとした。なお作業労力の軽減のため、オンラインで公表されている電子広韻を利用し、必要に応じてデータを加工する。 本年度は、以上の作業を通じ、6文献分の字音来源データが整備され、この試験的な運用により各自研究を進め、論文にて報告を行なった。
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