当研究の1年次に得られた学術用語、専門用語を表記する漢字や字体などについての知見等を元にして、さらに以下の調査・研究を実施した。 まず、各種の専門分野における各種の文献に基づきながら、問題となる漢字の字種や字体などに関して、それらにいかなる使用状況があるのかという実態について調査・研究を行った。その際に、当該分野ないし関連する分野における書籍、辞書等で、その字種や字体などが出現するおおよその年代についても追跡を実施し、それらの使用、記録された動態に関する通時的な探索を行った。 日本人による日常の文字生活の中で、手書きによって生じた漢字字体には、煩瑣を嫌う心理的な要因に加え、利き腕その他の筋肉の運動など生理的な要因がかかわることが考えられる。そうした点において高い共通性を持つと考えられるものとして、日本各地で行われている地名(小地名レベルを含む)に関する資料に対し、漢字字種と字体などについての実態に関する調査・研究を実施し、それらの資料における字種や字体などとの比較検討も行った。また、労や偏などの共通する字種の間で、理論的、演繹的に作り出された略字との種々の差とともに、共通点をも見出だすために、「朝日新聞」における2006年以前(拡張新字体を原則的に廃止する以前)の活字字体等を確認、整理し、それとの照合も行った。 さらに、中国、韓国など、他の漢字圏における各種の刊行物等に対しても、使用されている漢字の字種や字体などの比較対照を試みた。 上記の調査・研究を含め、今年度までに判明した事象や原因などのことがらについて、関連する成果を順次、公表した。
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