非選択目的語の生じる典型的な構文である英語の結果構文に関して、その成立条件の解明を目指した。これまでの研究において、結果句の選択に関して、有界性制約に基づく説明を提案したが、一見その反例とも考えられる非有界的な形容詞が生じる事例を検討し、それらを見せかけの結果構文(spurious resultatives)として分析することによって、有界性制約の適用する真の結果構文(true resultatives)と区別できることを明らかにした。見せかけの結果構文における結果句は、副詞・付加詞的なふるまいを示すことが従来から指摘されているが、本研究では、見せかけの結果構文が、変成(transformation)の事象構造を持ち、変化の前後で事物の構成(constitution)の一貫性が絶たれるのに対して、真の結果構文における変化は、構成の一貫性が維持される内在的変化に限定される点で、両者が対照性を示すという仮説を提示した。関連して、見せかけの結果構文における結果句の副詞性は、構造的な主述関係が成立していないことに起因していることを指摘した。今後の展望として、結果句に駆動される構造的要請の強い真の結果構文と、動詞の語彙的意味(結果含意)に依存する見せかけの結果構文の対比について、その背景となる文法のメカニズムを理論的に考察することが必要となる。
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