本研究の目的は、副詞の特性を精緻に記述した上で、副詞の統語的・意味的振る舞いからミニマリスト・プログラムにおける理論装置を検証し、言語システムの構築を目指すものである。 本年度は、前年度に積み残した問題について、新たな見地からこの目的を達成するために次の3点について行った。 1. 歴史的観点からの理論を補強するために、Roberts(2008)を書評としてまとめた。【この研究成果は書評[Roberts (2008)Diachronic Syntax】として、『近代英語研究』(近代英語協会)に掲載される(2009.5)】 2. 本研究では、従来の分析とは異なる新たな仕組みを副詞分析に提案している。その妥当性をさらに検証するために、従来主力となっていた指定辞分析を推進する有力な研究書について精査し、問題点をあらためて指摘、本研究の妥当性を補強した。【この研究成果については書評:Haumann(2008)Adverb Licensing and Clause Structures in Englishとして現在ある雑誌に投稿、審査を受けているところである】 3. 理論装置の構築について、昨年度はAgreeという観点から副詞についてアプローチしたが、いくつかの問題点が発見されたため、方向転換をした。その結果、c-commandという、よりprimitiveな構造型およびミニマリストの核となるPICの相互作用によって副詞の分布を説明できるのではないかとの知見が得られた。この知見によってミニマリスト・プログラムの理論装置において意味解釈に関わる言語事実においてもc-commandという構造型が必要であるという副次的成果も得られている【この研究成果については現在、一次審査を通り、再審査を受けているところである】
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