研究概要 |
生成文法では、意味解釈部門(LF)のコピー操作、または、音韻解釈部門(PF)の削除操作による省略文の分析が提案されてきた(Sag(1976)、Williams(1977)等々)。本研究では、Chomsky(2000,2001)が提案するフェーズ理論の下、ここれらの操作を引き起こす形式素性がフェーズであるCPとvPの主要部に随意的に基底生成され、(1)の特性を持つと提案した。 (1)a.コピー操作を引き起こす形式素性を持つ主要部の補部と指定部には、空所と音形を持つ要素がそれぞれ選択され、LFで空所に先行詞がコピーされる。 b.削除操作を引き起こす形式素性を持つ主要部の最大投射はPFで削除される。 この提案によると、間接疑問縮約(Sluicing)、空所化(Gapping)、擬似空所化(Pseudogapping)の省略文はLFにおけるコピー操作により派生し、動詞句削除(VP-ellipsis)はPFにおける削除操作により派生する。また、(1)の提案により、これら四つの省略文が示す(2)の異なる現象に対して統一的説明を与えることを試みた。 (2)a.間接疑問縮約、動詞句削除、擬似空所化は埋め込み節に生起できるが、空所化はできない。 b.動詞句削除と間接疑問縮約では埋め込み節を含む複文を省略できるが、擬似空所化と空所化ではできない。 c.動詞句削除においては、省略を受けた文とその先行詞となる文の態が一致しない場合でも許されるが、間接疑問縮約、擬似空所化、空所化の場合は許されない。
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