平成18年度は、研究計画に挙げた通り、英語の現在完了形の意味構造における時制の意義の解明に重点的に取り組んだ。現在完了形の構成素の一つである、HAVEに付随する時制形態素の意味機能は、基本的に単純現在形や現在進行形の場合と同じであり、英語における現在時制形態素を含んだ全ての単文節の時制現象を統一的に説明出来ることを、日本認知言語学会第7回大会において口頭発表した。そのプロシーディングが現在印刷段階にある。 そこでは、英語の現在完了形は、現在の状態を表す表現の一種であり、「過去分詞の表す事態の生起によって何らかの影響を受けた状態を、話者が現在保持していること」を表すと考えることにより、英語の現在完了形を過去表現の一種として捉えてきたこれまでの見解によって生じ観察されてきた様々な矛盾や、未解決の問題に筋の通った説明を可能にした。これはまた、現在完了の理解や指導には文脈や発話の場への意識や考慮が不可欠だということでもある。 更に18年度後半においては、現在時制の形態素の機能に関し、アスペクトなど、他の面からも取り組み、これまでは発話行為(即ち動作)を表すとされてきた、必ず単純現在形を取る遂行文のメカニズムにも取り組み、発話行為そのものではなく発話行為を説明する文として、genericsとの共通性を捉え、やはりここでも現在時制の形態素は、ある状態が事態認知の一瞬で成り立っていることを表すことを論じ、情報工学部紀要として纏めた。
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