研究概要 |
1.20人の日本語話者の10種類の英語二重母音の発音明瞭度について,5人の米語母語話者が3段階で評価した結果,/α〓/(bar)の明瞭度が最も低く,/a〓/(buy)が最も高かった。明瞭度の低い/α〓/は/α:/と聞き取れられる例が最も多かった。母音のフォルマント分析の結果,明瞭度の高い発音では,母音後半において,F3が下降し,F3とF2との接近が見られたが,明瞭度の低い発音においては,F3とF2の差が開く傾向にあり,日本語母音/a:/との音響的近似が見られた。低明瞭度の発音においては母語干渉が起きているといえる。2.英語中舌,後舌母音〓:/,/∧/,/α/,/α:/の4母音の日本語話者の発音明瞭度については,/〓:/(Bert)が最も低く(1.54),/∧/(2.22),/α/(2.50),/α:/(2.72)の順であった。低い明瞭度の/〓:/を米語話者は/α〓/と聞く場合が最も多く,音響的には,高明瞭度の発音と比べて,母音前半における高いF3と大きなF2とF3の差が見られ,日本語母音/a:/の母語干渉が示唆された。また,低明瞭度の/∧/においては,/〓/と聞き取られる場合が最も多く,高明瞭度の発音より母音が長く,F1とF2の周波数が高い傾向にあった。3.日本語話者20人の英語の7種類の子音(後続母音が/i:/,/e/,/u:/,/〓/,/o:/の単音節語における語頭の/h/,/∫/,/〓/,/s/,/z/,/w/,/j/の発音明瞭度について,米語話者2人と英語話者3人が3段階評価を行った。後続母音が/i:/の/h/,/∫/,/〓/,/s/,/z/,/j/は,/e/が後続する場合よりも明瞭度が低く,それぞれ/〓/,/s/,/d/,/∫/,/〓/と聞き取られる傾向にあった。/j/は/i:/が後続するとまったく認識されない場合が多かった。後舌母音が後続する場合の/h/と/w/は,前舌母音が後続する場合と比べ明瞭度が低かったが,/∫/や/j/は,後続母音が後舌母音である方が明瞭度が高かった。これらのことは日英語の音素配列の違いに主に起因すると考えられた。
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