最終年度に当たる2009年度は、過去3年の実証研究で得られた音声データの分析と理論との調整を研究の中心とした。その成果を"Prosody of Positive and Negative Conjunction"という題目で、2009年9月にフランスのシカゴ大学パリ校での第3回国際談話韻律学会(The third international conference on Discourse-Prosody Interface(IDP09)で口頭発表した。これを同じ題で論文としてまとめたものが完成しており、近々会議録の中で公表されることが決定している。 接続詞の意味が、節と節、文と文の間のポーズや音韻現象に影響を与えるかどうかを研究目的とし、順接的接続詞の方が逆説的接続詞よりも音韻現象を阻止するという、これまでの説を検証した。英語と日本語の文を読み上げる実験を行った結果、従来の説は英語に関しては当てはまるが、日本語は逆説的接続詞の方がポーズやピッチの立て直しを生じることから、英語とは逆の性質を示すことが分かった。 この英語と日本語の対称性を説明するために、統語構造が右枝分かれと左枝分かれのためにそれを示す括弧表示が逆になること、接続詞が英語は語であるが日本語は形態素であること、両言語とも逆説的関係が順接的関係よりも意味的に密接な関係にあること、という3点を考察した。 この研究により、これまで世界的に見てもほとんど研究のなかった2文間さらには談話における音韻現象や接続詞の意味との関係について、新しい研究の道を開くことができた。国際学会での発表により、海外の研究者からも関心を寄せられている。
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