英語の動名詞と派生名詞がある一定の環境に生じると、主節の主語が動名詞の目的語として解釈されることがある(The bridge deserves reconstructing./The city deserves reconstruction.)。このような目的語解釈を許す名詞表現はそれぞれ、遡及的動名詞、遡及的派生名詞と呼ばれる。今年度はこの現象について細かく検討し、日本英語学会第25回大会(名古屋大学)において研究発表(招聘)を行った。この発表において、動名詞の基体となる動詞が多くの場合活動動詞(activity verb)であり、全体として受動態と同じ特性を持っことを示した。また、この構文において動名詞は独自の時制を示すことはないことを指摘し、時制をマークする節点(TP)を含まない構造を想定する必要があることを論じた。また派生名詞については近年、その内部構造においてVPを含むとする提案がなされているが、この提案に基づいて上記の派生名詞構文を考えた場合、なかでもdo so置換と呼ぼれる現象に関して興味深い事実が説明できることを示した。また、派生名詞にもTPを含むべきであるという主張もなされることがあるが、この主張は再考すべきであることを示した。また、2月16日に「英語学フォーラム」(福岡工業大学)を開催し、福田稔(宮崎公立大学教授)、古川武史(福岡工業大学准教授)両氏の発表に加えて"Object Interpretation in the Nominal Expressions"を発表した。英語学会と英語学フォーラムにおける質疑応答を通して動名詞及び派生名詞に関する多くの問題を認識することができた。
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