研究概要 |
動詞と前置詞句の組み合わせから生じる動詞表現の意味表示を検討し、事象構造、特質構造と共合成の関係、そして共合成の条件を明らかにした。動詞の項として振る舞う前置詞句と動詞の語彙表示の組み合わせに関しては語彙表示の「共合成の条件」を提案し、それが適用されない場合は、意味の「合成」が行われ、前置詞句は動詞の付加詞句となることを提案した。 共合成は、(1)のような動詞と前置詞句の組み合わせからなる動詞表現を合成する。本研究では、動詞と前置詞の事象が同じタイプで、それぞれの事象が結びつけられる特質役割が同じタイプの場合は共合成によって事象が合成されることを明らかにした。(2)の前置詞句in句は状態事象のみからなり、活動動詞のlaughは過程事象のみからなるため、事象のタイプが異なるので共合成の操作は適用されない。 (1)a. This kind of dog exists only in Japan. (exist: state, in: state) b. Sally came into this room. (come: process+state, into: process+state) c. John ran to the station. (run: process+process, to: process+state) (2)#John laughed in the classroom. (laugh: process, in: state)(「ジョンが笑って教室に入った。」の解釈) 英語の前置詞、日本語の不変化詞は、共合成が適用されない場合、(3)の「合成」の操作を受ける。(4)では、移動動詞とin前置詞句が共起している。(2)と同様に、ここでは共合成の操作は適用されず、(3)が適用される。 (3)合成-事象の代入- 動詞の下位事象が前置詞の語彙表示の項に代入される。 (4)The children ran in the park.「子ども達は公園の中で走った。」 以上のように、動詞の項と付加詞となる前置詞句の意味の合成を明らかにした。
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