日本語のアクセントの生成と受容 : 生成においては、音声的な特徴であるピッチ下降現象を呈するが、受容については、音韻的アクセント型LHH(低高高)、LHL(低高低)等のように聴き取り、ピッチ下降現象は知覚されない。この受容と生成のギャップについてはFujisaki(1988)があるが、本研究では、脳における受容について脳波成分のMMNを分析した。その結果、脳内でのピッチの受容は、ピッチ下降現象に基づいているという示唆を得た。 日本語アクセントの脳内無意識処理についての先行研究 : Inouchi et.al.(2003)の結果は、刺激音に1音節2モーラの有意味日本語を使ったにもかかわらず、結論として、刺激音は語音としてではなく音として捉えられたとされている。刺激音は、日本語母語話者から自然な語に聞こえるという判定を得ている合成音ではあるが、ピッチ下降現象は全く無視されている。そこで、脳内における無意識受容は、ピッチ下降現象が認められない刺激音を自然な語音と捉えなかったものと推測できる。 ピッチ下降現象 : 以上から、日本語アクセントの無意識処理にはピッチ下降現象の関与は不可欠な要因であると考えられる。 本研究の意義、重要性 : 結論として、脳における日本語アクセントの無意識処理は、ピッチパタンによって異なり、その原因はピッチ下降現象の関与の違いであると考えられるが、対象者の母語の影響は現れず、その原因は刺激音に無意味語を使ったことによるという示唆を得た。これにより、脳におけるピッチ下降現象受容の可能性が証明され、合わせて、ピッチ下降モデルの妥当性も証明され、日本語アクセントの無意識処理にピッチ下降現象が重要な貢献をしていることが示唆された。
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