本研究が明らかにしたいのは次の3点であった。1.第二言語不安傾向の違う学習者に対する、効果的な事前の言葉かけ、フィードバックの方法について検証すること。2.通常の教室環境とe-learningのそれぞれにおいて、第二言語不安の変化、フィードバックの効果について検証すること。3.効果的な学習指導のために知ることが必要な学習者特性を、第二言語不安を中心に検討すること。 平成17年度の実験では事前調査に基づいて、言語不安を操作するフィードバックを返す実験群と、返さない統制群に分けた。学習者の不安を操作するフィードバックメッセージを返すことによって、学習を促進し学習効果を高めることができる可能性が示唆された。平成18年度には、フィードバックの文言に関するアンケート調査の分析を行った。その結果、不安の高低に関わらず、失敗したときの叱咤のフィードバックメッセージはあまり効果がなく、両者ともに成功したときに賞賛・激励のメッセージを受け取ると動機が高まるということがわかった。言語不安、自尊感情、フィードバックのタイプなどによる定型的なパターンを見出すことはできなかったが、同じフィードバックメッセージに対して、ある群では効果があるが、ある群では効果があまり無いものがあることが確かめられた。実際の学習場面においては、多様なフィードバックを組み合わせ、課題の難易度によっても与え方を変えることも必要であり、失敗した場合に再チャレンジの機会を作る、失敗や成功を能力や運でなく努力に帰するメッセージが必要であるということも示唆された。研究課題3点のうち、第1の点についてはかなりの程度明らかになったが、第2、第3については、さらなる実証研究が必要である。
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