研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、大東亜戦争中日本占領下のシンガポールにおける、ラジオ放送や新聞による日本語の普及と使用された教科書を調査し、メディアによる日本語普及の実態を明らかにすること、である。平成18-19年度シンガポールに渡航し、本研究の対象となる英字新聞「The Syonan Times」について調査し分析を行った。具体的には、英字新聞に掲載される日本語コラム「Nippon Lesson」(1942.2.21-1944.10.4)、ラジオ日本語講座「Radio Nippon-Go Lesson」(1942.4.15-1943.7.13)のテキストおよび日本語普及に関する重要記事を網羅した索引を完成した(『九州大学留学生センター紀要』2008年17号)。「Nippon Lesson」では、三シリーズともにローマ字表記、分かち書きが施され、語彙は日用品や日常生活に関するものが多かった。テキストに英訳が付され、文法説明や発音注釈も英語が使用されていた。一方、文法項目は簡単なものから難しいものへ、易から難へ、という体系的な構成となっていることが明らかになった。こういった特徴は日本軍政監部の現地における、「実用で簡単な日本語」といった一時しのぎの言語政策を反映し、南方占領地における日本語普及失敗の一因とも考えられることが示唆された(「11.研究発表」を参照)。メディアによる日本占領地の日本語普及の研究は、国内外においてはまだ行われていない処女領域である。期待される本研究の成果は、メディアによる日本占領地日本語普及の研究という、新たな革新的な研究領域を切り開き、日本語教科書との比較研究や他の日本占領地でのメディアによる日本語普及の研究へ発展させるために重要な学術的な手がかりになるものであろうと思われる。
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Grant-in-aid for Scientific Research Publication (Submitted)
九州大学留学生センター紀要 17
ページ: 1-27
the index of 'Nippon Lesson', 'Radio Nippon-Go Lesson' and other major articles related to Japanese language popularization appeared in the Syonan Times (Research Bulletin of the International Student Center of Kyushu University) 17