本年度の韓国語話者の分析では、「たたんたん、ただんたん、だたんたん、だだんたん」および第二ユニットを「たー、だー、たっ、だっ」に置き換えた12語を、「それは.....です。」の埋め込み文にいれた発話を10回ずつ収録し、分析の対象とした。この分析の結果、生理的なパラメータである呼気圧と呼気流量を分析のパラメータとすることで、音響的なデータだけでは明らかにならなかった韓国語話者の日本語破裂音の特徴が得られた。具体的には、内破の持続時間とVOTが呼気圧、呼気流量とどのような関係にあるのかを分析したが、音響的には濃音として発音されていても呼気流量が多いために激音として実現されていることが分かった。韓国語学習者において、語頭有声破裂音の無声化・語中無声破裂音の促音化が起こり、語音の長さが日本語話者とは異なって実現されている場合には、生理的な要因からは今回のような説明が可能であることが示唆された。この結果については、日本音声学会研究例会にて口頭発表を行った。 この生理的な実験での問題点は、機器の消耗品、特に口腔内圧測定のためのチューブの素材である。現在使用しているものはビニール様のもので、以前使用していたシリコンのものとは硬さが異なるため、データの収集が不安定になっているように思われる。さらに国内での販売網も手薄となり、一層入手が困難となりつつある。もう一つの問題は、データ収集時に顔に当てるマスクであるが、被験者が自分で支える形式をとっているため、押さえ方によっては息が漏れる可能性もある。この点は、現在改良すべく作業を行っている。
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