19年度の韓国語話者の分析では、「たたんたん、ただんたん、だたんたん、だだんたん」および第二ユニットを「たー、だー、たっ、だっ」に置き換えた12語を、「それは..........です。」の埋め込み文にいれた発話を10回ずつ収録し、分析の対象とした。この分析の結果、韓国語話者の日本語発音の特徴である語頭有声音[da]の無声音化、および語中無声音[ta]の促音化について、生理的なパラメータである呼気圧と呼気流量を分析のパラメータとすることで、新たな知見が得られた。すなわち、音響的には濃音としての発音であるにも拘わらず、生理的には呼気流量の制御がうまく行なわれず激音として実現されることにより、特徴的な発音になることが明らかとなった。この点について、学会誌である『音声研究』に発表した。 韓国語は、激音、濃音、平音の3項対立をもつ言語であり、リズム類型としても未だ定説のない言語であるが、2項対立をもつ中国語話者(北京方言)ではどのようになるか、同様の実験を行い、分析、検討した。資料語は、同様であった。中国語話者の場合、韓国語話者とは異なり、語頭拍が長音化する現象があり、音響的には「たたんたん」の方が「たーたんたん」より全体長が長くなるという現象が見られた。促音化については、中国語話者も韓国語話者と同じように観察された。これらの現象について、生理的に分析した結果、呼気圧ではなく、呼気流量の値が日本語話者とは大きく異なることが明らかとなり、呼気流量の制御が学習者の発音に大きく関わっていることが示唆された。この研究結果については、本学の紀要に発表した。
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