本研究は、日本語教育活動における教師と学習者、学習者同士の社会的相互作用の言語的・非言語的特徴、認知過程、言語学習の関係性について、心理学的実験法や会話分析の手法等を用いて実証的に解明するとともに、社会的相互作用を分析するための新たな研究方法を開発することを目指す。 具体的な目的は、次の通りである。 1.日本語教育活動における、教師と学習者、学習者同士の相互作用過程を、会話分析の手法を用いて、話者交替、修正、談話構造、参加構造、言語形式、意図等の観点から詳細に明らかにする。 2.どのような社会的相互作用が日本語習得を促進するのかを解明するために、学習が成功する場合と失敗する場合の言語的・行動的特徴の違いについて定性的・定量的分析を行うことにより明らかにする。 3.他者との相互作用過程において学習者はどのように知識を再構築していくのかを詳細に分析することにより、日本語学習のメカニズム解明の手がかりを得る。 本年度は、次の活動をおこなった。 1.関連文献・資料の収集及びデータベース化: 心理学、言語学、社会学、第2言語習得、日本語教育等の分野におけるコミュニケーション、及び、学習と社会的相互作用に関する文献を収集し、データベースを作成した。 2.社会的相互作用分析のための方法論の検討: 作成したデータベースを利用して、先行研究における社会的相互作用の研究方法を検討するとともに、研究代表者がこれまでに収集した談話データ等を対象として、先行研究に見られる特徴的な研究方法を用いて実際に分析を試みた。 3.社会的相互作用と学習に関する予備的観察の実施: 小・中学校の授業を観察し、ビデオ及びフィールド・ノートによる記録を行なった。相互作用においてどのような言語的・行動的特徴が学習の成功に寄与するのか、相互作用過程において学習者はどのように知識を再構成していくのかという観点から、収集したデータを分析した。
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