本研究は、公的な意思・政策決定やグループでの意思決定で必須である、議論(アーギュメント)という行為に焦点を当てる。議論下手とも評される傾向にある日本人の議論は、実際どのような構造上の特徴を持つのかを明らかにするのがこの研究の目的の一つである。同時に、対人・異文化コミュニケーションの知見に基づきモデルを構築し、その検証を通じて議論の構造上の特徴はどのような要因によって説明できるのかを実証的に明らかにするのが、もう一つの目的である。それによって、『あいまい」、「間接的」、「独特の理論による」等、日本人の議論の傾向として多くは印象に基づいて語られてきた姿の実態を客観的方法で明らかにする。また、議論の特徴の違いを単に異なる集団間の差の比較にとどめるのではなく、包括的な説明の枠組みを提案することによって、理論的にも意義の高い研究を目指す。平成18年度から平成19年度の期間内に、(1)異文化間で議論の構造にどのような差異が見られるか、また、(2)その差異をどのように体系的に説明できるか、という二点を明らかにすることを目的とする。「議論の構造」が具体的に意味するものは、コミュニケーションの場において、自分の見解・意見を最終的に相手に受け入れさせることを主な目的とし、説明を展開していく際のディスコースが持つ、静・動的展開パターンである。この研究で提案されるモデルの検証を目的とする。 研究計画書に基づき18年度は(1)議論分析方法の発展・資料収集、(2)予備的データ分析と国内でのデータ収集、(3)国外でのデータ収集の準備を行った。
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