現在ヨーロッパでは、欧州評議会のイニシアチヴに見られるように、言語政策におけるヨーロッパ共通の枠組みづくり=標準化が意欲的に進められ、大きな成果を挙げている。しかしそのプロセスは、言語教育政策はもちろん、EU内の合意形成プロセスや歴史的マイノリティに対する政策、移民統合政策等とも密接にかかわり、多分野で多くのアクターによって同時並行的に進行しているため、個別的観点(例えば言語教育)からでは全体像が掴みにくい。 そこで本研究では、現在輪郭を整えつつあるそうしたヨーロッパ共通の言語政策の全体像とその本質を把握することを試みた。その際、言語政策の主要分野を「超国家的公用語政策」、「歴史的マイノリティ言語政策」、「移民言語政策」、「異言語教育政策」の4つと措定し、それぞれについて最新の一次資料を網羅的に調査した。その結果明らかとなったのは、ヨーロッパ共通の言語政策が「合理主義」対「民主主義」、「国民国家」対「超国家的次元」、「マクロ」対「ミクロ」という3つの関係によって強く規定され、またそれらによって新たな変化が促されている点である。ヨーロッパの提示する新たな言語政策モデルは、その点を踏まえて日本でも移植を検討すべきである。 以上については2つの学会発表等を通じて報告を行い、また現在鋭意、論文化する作業を進めている。
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