本研究では、パソコンによる英語リスニング訓練法の実証研究を行なうのに、行動分析学で用いられるシングルケースデザインの手法を用いることとしたため、従属変数の複数回測定が懸案となっていた。つまりリスニングのテストを繰り返していくと、それ自体が訓練として機能し、介入を行なわなくともテストの得点が向上するのでは、という懸念があった(1)。その解明と解決策の提案として、平成18年度前期には英語専攻の大学3年生2クラスを対象に、日本語による内容再生とディクテーションから構成されたリスニング小テストを、学期中7回および10回実施した。同時にTOEIC形式のリスニングテストを同じ参加者に実施し、そのデータを元にテストの信頼性と妥当性を検証した。この調査により、クラスのデータを標準化し、素点の代わりにZ得点を用いることで、複数テスト間の難易度に左右されず測定が出来ることが保障され、また各リスニング小テストとTOEICデータの有意な相関結果より、テストの信頼性と妥当性が検証された(2)。この結果にしたがい、平成18年度後期には、マルチベースラインデザインにより、訓練の実証実験に入った。訓練はパソコン上で、語彙を学習するセクションと、学習した語彙を英文中で素早く認識するセクションに分かれる。訓練ソフトは東矢(研究代浅者)が内容と構成をデザインし、眞邊(研究分担者)が作成した。データ収集は週2回の小テスト16回の測定と、開始時期をずらした被訓練者8名の訓練プログラムの使用をメインとし、事前・事後のストラテジー使用の質問紙調査、語彙知識テストなどを含む。またパソコン上には、英文中の語彙認職の反応時間を含む学習履歴が、ログとして残る仕組みになっている。データは全て、現在分析中である。なお(1)は今年度の研究発表欄参照、(2)は論文として印刷中である。
|