平成18年度の結果を分析した結果、語いの習得に着目したパソコンプログラム「聞記耳ちゃん」の効果がマルチベースラインデザインにより実証された。その結果を受け、平成19年度前期には別の学習者を対象に、プログラムの部分的使用の効果(N=7)およびやや英語力の低い学習者への効果(N=5)を、マルチベースラインデザインで検証した。その結果、部分的使用(実験2)においては英文中の語彙認識効果は期待できるものの、文全体の聞き取りは顕著には向上しなかった。またやや英語力の低い学習者が「聞記耳ちゃん」で学習した場合(実験3)、特に英語力が低いと思われる2名で学習の効果が極めて低いことが確認された。これらの結果から意味と音声のマッチング、ディクテーションの学習のみでは、語彙の認識効果および英文の聞き取りの向上があまり期待できないことが示された。さらに習熟度の低い学習者においては、フルプログラムを使ってもリスニングの向上が見られなかったことから、このカテゴリーの学習者に関しては、語い学習と英文中の語彙認識訓練以外に、何らかの方策を施してやる必要性が示唆された。そしてパソコンプログラムでの学習後に行なった個別インタビューにおいては、このようなアプローチが目新しく、学習の動機づけになっていたことが明らかになった。なお平成18年度前期に収集した「複数回測定の信頼性・妥当性検証」のためのデータ分析の結果は、「行動分析学的アプローチにおける英語リスニングの複数回測定の妥当性・信頼性について」というタイトルの論文として公表している。また今回の研究成果を東矢は博士論文としてまとめ、日本大学大学院総合社会情報研究科より博士号を取得した。報告書にはこの博士論文が掲載されている。
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