本研究の目的は、第二言語習得過程に及ぼす第一言語の影響と文法構造の習得を規定する言語の普遍的および個別的な資質を明らかにすることである。そのため、幅広い年齢層(幼児〜大学生)の第二言語学習者とバイリンガル児を対象に、実験的手法により横断データを収集する。研究初年度にあたる平成18年度は、今まで蓄積した自然発話データの限界を補う(すなわち、産出されない言語構造の知識を調査する)ため、理解テストや誘引産出テスト、また動画を用いた実験の開発を行った。国内外の言語発達、第二言語習得に関する学会に参加し、最新の研究成果を把握するとともに、情報収集・情報交換を行い、実験の立案、予備実験を行った。 本年度は、日英語の文法発達に関し、特に以下の3点に焦点を当てた。 1.動詞の項構造(移動や様態を表す動詞など) 2.動詞のアスペクト(特に『進行』と『状態』の相違について) 3.上記の動詞の項に付く日本語の格助詞、また英語の格 予備実験として、日本人の子ども(幼児)を対象にパソコン上で動画を用いた文産出テストを行い、特に日本語(母語)の移動・様態を表す動詞の習得について検討した。この産出テータは文字起こしをし、データ分析を行っている。また、大学生を対象に動詞のアスペクトの習得について文法性判断テストを行ない、学習者の犯す誤りについて考察した。次年度以降、実験手法の改良と、小学生〜高校生を含む第二言語学習者ならびにバイリンガル児を対象として予備実験を行った後、本実験に入る予定である。
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