文部科学省は新しい指導要領のもと、公立小学校の5、6年生に対して週1回の外国語活動を行うこと決定したが、今までどおり「読み書き」指導をしない方針をとった。 本研究においては、公立小学校の5年生を対象に、英語のリタラシー指導を行い、彼らの能力を測定することから、小学校段階におけるリタラシー能力の発達に関して検証を行った。具体的には(1)アルファベット知識、(2)英語の音韻認識力、そして(3)英語の単語認識能力、それぞれの発達とそれに関連する能力について研究し、効果的なリタラシープログラムを開発することを目的とした。 研究初年度には、アルファベット指導と音韻認識指導を行ったが、それぞれ指導の効果は統計的に証明され、参加者たちは有意に能力を伸ばしていることがわかった。また、小文字の認識力の発達にはローマ字能力が大きく影響していることもわかった。 研究2年目では、参加者が6年生に進級し、指導時間も倍になったことからボトム・アップ的な指導のみでなく、トップ・ダウン的な指導を試み、単語知識の増加とリーディング能力の開発に努めた。単語に関する知識がどのような能力の影響を受けるのかを調べた結果、その相関係数の高さから順に並べると、(1)アルファベット小文字を書くカ(r= .821)、(2)ローマ字能力(r= .761)、(3)国語の総合評価(r= .741)、(4)アルファベットの音声を聞いて子文字が理解できる力(r= .735)、(5)アルファベット大文字の知識(ポストテスト)(r= .692)、そして(6)音韻認識能力(ポストテスト)(r= .644)であった。 現在、国の方針としてはリタラシーについては慎重な構えを取っているが、今回のプロジェクトで指導内容、指導方法を工夫すれば、小学校段階でのリタラシー指導は有効であるということが実証された。
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