今年度は本研究遂行最終年度にあたり、3言語の音声実験・音声分析を継続しながらこの3年間の成果をまとめる作業を行った。本年度の成果は以下のとおりである: ・英語については初級者、上級者および英語母語話者とも子音部を含む韻律単位の長さの傾向は類似するが、初級者と母語話者との母音部の長さの懸隔はもっとも大きく、上級者はその中間に位置する。母語話者は強勢のある音節は理論どおりに極端に長く発音されるが初級者は強勢のある無しに殆ど左右されず日本語の音節の処理をそのまま英語に当てはめた形になっている。上級者は場合によって母語話者に近くなるが韻律単位の長短にメリハリが少なく日本語的特長が散見する。 ・ドイツ語では、初級者と上級者の発音の相違は韻律単位の長さの違いであり、挿入母音の量的・音質的相違が関与することが新たに明らかになった。初級者では音節構造保持のために日本語母音が挿入されるのに対し、上級者では言語に共通する普遍的な母音が挿入され、母音の無声化といった傾向がみられた。 ・フランス語は、母音と子音の長さに強さを取り込んで、両要素が如何に関係しながら表出されるかという分析を行った。結果は、文末の音節については、フランス語母語話者は「長く・弱く」発音しており、機能語については、母語話者は「短く・弱く」発音していることが分かった。最後に、「子音+半母音+母音」「子音+母音+母音」「子音+母音+半母音+母音」の連続に関しては、母語話者は「短く・弱く」発音していることが分かった。
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