研究概要 |
本研究の最終的な目的は、アメリカに於ける早期日本語教育に焦点をあて、日本の小学校での英語教育の基礎資料を構築することにある。筆者は過去数年の研究に於いて、日本語イマージョン教育(算数、理科等の科目を外国語である日本語で教育する形態)の児童の日本語音声の習得に焦点を当て、日本語母語話者と音声的に同じくなることはないが、類似する日本語と英語の音を巧みに区別していることを明らかにした(Harada,2006b, in press)。 上記の結果を踏まえ、今回はイマージョン教育の卒業生の音声能力維持という観点から研究を行った。日本語イマージョン教育出身の日本語学習者(大学生)は、幼稚園や小学校のイマージョンプログラムで習得した日本語の音声(/P,t,k/のVOT、促音)を大人になってもそのまま維持できていることが判明した(Harada,2006a,2006c,2007)。本研究に参加した日本語イマージョン教育の卒業生は、小学校では少なくとも全授業の50%を日本語のみで受けたが、中学校以降は日本語の授業数が急激に減り、大学まで一般の学生と一緒に伝統的な外国語のカリキュラムで日本語を学習してきた。しかしながら、幼稚園・小学校での日本語イマージョン教育で習得した発音能力は、その後日本語のインプット量が激減しても、そのまま維持することができていると言えそうである。 この研究は、途中経過でもあり、またイマージョン教育に於ける外国語のインプットは、質・量共に日本の早期英語教育と異なるので、最終的な結論を出すには注意が必要だが、日本の小学校英語教育の基礎的な資料となれば幸いである。
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