早期言語教育とくにイマージョン教育の音声習得を音声学的かつ言語心理学的に考察を行ない、第二言語における音声習得のモデル(Flege、1995)を検証することにある。具体的には、アメリカの小学校に於ける日本語イマージョンプログラムに在学中の児童の日本語と英語の音声習得と同プログラムの卒業生の日本語の発音維持を実験により考察するものである。日本語イマージョンプログラムの在学生15人、卒業生10人、同プログラムの教員5名、英語と日本語の母語話者それぞれ10人からデーターを得た。日本語は促音(/pp、tt、kk/)と非促音(/p、t、k/)を、日本語と英語のVoice Onset Time(破裂音の開放かう次の母音の開始時間)は語頭に/p、t、k小を含む語を短い文に入れて読ませ、促音と非促音の閉鎖時間とVOTを測定した。日本語イマージョンプログラムの在学生の促音とVOTの習得に関しては、1)促音の持続時間は母語話者よりも短いが、促音と非促音の区別ができ、心理的に両者の音声範疇が別に形成されていると判明した。2)日本語と英語のVOTも区別しているが、その音声範疇は母語話者のものと異なった特徴を持っている。3)母語話者と異なる音声特徴を持っているのは二言語間の音声範疇を心理的に区別するための一つのストラテジーと考えられる。これはFlege(1995)の第二言語の音声習得のモデルを支持するものであろう(Harada、2006b、2007d、原田2007)。さらに、イマージョンプログラムの卒業生の日本語音声維持に関しては、最終結果はまだ出ていないが、年少期の集中的な音声のインプットにより形成された外国語の音声範疇は、その使用頻度が急激に落ちても、維持できるという結果が出ている(Harada、2006a、c、2007a、b、c)。
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