(1)以酊庵輪番制に関わる史料・論文、(2)対馬藩士の編纂になる外交史料(『善隣通交』など)、(3)元禄竹島一件の歴史的評価にかかわる史料・論文、を収集するとともに、(4)近世日朝間における外交折衝の特色を分析・評価するうえで必要と思われる近代日朝漂流関係史料をも収集した。収集した史料のうちいくつかを選んで翻刻作業を進めるとともに、とくに(3)について、元禄竹島一件が、当時どのように評価され、のちにどのように評価替えが進められてゆき今日に至るのか、との観点から分析を進めた。 元禄竹島一件に際して日朝間で争われたのは、そもそもは竹島(欝陵島)海域における漁業権の問題であって、竹島(欝陵島)の領有権に関わるものではなかった.また、そこに往々にして松島(こんにちの竹島/独島)の領有権問題が議論されたかのごとく誤解されるが、当時の議論にそうした痕跡は存在しない。松島(竹島/独島)領有権問題が当時争われたと解される重要な論拠としての安龍福事件について、その解釈がいかに不当であるかを解明した(研究成果欄の『鳥取地域史研究』所収論文)。一方、漁業権問題が領有権問題にすり替わっていく経過に関わっては、地誌・古地図の分析を通じて、竹島(欝陵島)-隠岐諸島海域に対する領域認識の変化としてアウトラインを描いておいた(『史林』論文)。また、安龍福に対する過大な評価を「伝説」の形成としてとらえ、口頭発表をも行った(2006年10月26日・ソウル大学校師範大学、2007年1月14日・名古屋大学)。
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