鎌倉幕府の宗教政策研究は、(1) 鎌倉幕府が東国社会で展開した顕密寺社政策、(2) 鎌倉幕府が延暦寺・東寺・東大寺など畿内近国の権門寺院に対してとった政策、(3) 鎌倉幕府による禅律保護政策と顕密寺社政策との連関、以上3点を解明することから成る。 本研究は、鎌倉幕府による僧侶の人的編成や朝廷補任権への介入を網羅的に検出しながら、(1)(2) の課題を解明し(3) の課題への展望を得ることをめざす。 その際、留意すべきは幕府の政策の時期的な変化である。これまでの研究によって私は、鎌倉幕府の東国寺社政策が、時期と宗派によって変化のあったことを確認した。そこで本研究では、下記の事実を具体的に解明することによって、幕府の宗教政策の時期的特徴と、その歴史的変化を実証的に明らかにしたい。 (1) 寺門・山門・東密・興福寺系それぞれについて、鎌倉幕府と人的関係をとり結んだ僧侶の具体的事蹟、特に彼らが西国で行った活動を網羅的に検出する。 (2) 寺門・山門・東密・興福寺系それぞれについて、鎌倉幕府が関与した寺社紛争や、幕府が介入した権門寺院の長官人事の事例を網羅的に検出する。 (3) 以上を踏まえて、鎌倉幕府による禅律保護政策と顕密寺社政策との時期的偏差を明らかにする。 この基礎的な作業を積み重ねることによって、顕密体制における鎌倉幕府の位置や、顕密体制と東国仏教界との構造的連関を明らかにしたい。
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